幼いころ、皆さんは運動と勉強どちらが得意だったでしょうか。
最近の研究では、子供の運動力と学力には相関関係があることがわかってきています。適切な運動習慣を続けることで、「集中力」や「忍耐力」「前向きな思考」等が身に付き、運動だけでなく勉強の成果が上がって学力が上がると言われています。
運動能力が高いほど学力が高くなる
北欧のある小学校では毎日体育の授業があるクラスと、週2回体育の授業があるクラスで学力検査をしたところ、毎日体育の授業があるクラスの方が算数・国語・英語の成績が良かったという研究結果がでており、またアメリカでも同様の研究を行った際には心肺機能・筋力・俊敏性が高い子供たちほど算数や読解力の試験で高得点を獲得でき、そして体力がある子供たちほど全体的な得点が高かったという結果がでています。
なぜ運動能力が高い子供の成績が勉強に影響したのでしょうか。
運動するとき人は、「走る」「蹴る」「投げる」「跳ぶ」「打つ」などといった体の動きをしていますが、今まで経験してきた動きを脳が記憶し、それを場面に合わせてうまく組み合わせ脳から体に指令を出すことによって、さまざまなスポーツに応用させることができています。運動神経が良いといわれる人は、この脳の指令を適切に使いこなしているのです。
これを勉強に置き換えると、覚えた数式や単語、知識をその問題に合わせて脳が記憶から引き出して解くことができるのが勉強です。つまり、脳を使うという点でいうと、体を動かしたり問題を解くことはとても近い働きなのです。
アメリカでは運動能力が高いほど学力が高いという研究結果を出している研究者もおり、
実際、アメリカの名門ハーバード大学からは過去200名以上のオリンピック選手を輩出しているという実績があるほどです。
子供の運動不足は社会的な問題
近年、子どもの身長は食環境の向上に伴って昔と比べて伸びています。また体格もよくなっていると言われています。しかし近年、ゲーム機や携帯電話の普及もあり、外で遊ぶ機会が減った子供たちは、体を動かす基礎能力がぐっと下がり、運動力の低下しているということが問題視されているのです。
運動能力の低下に伴って、小中学校や高校では、生活習慣病にかかる子どもが増加しており、さらには「肥満」であったり、極端な「痩せ」といった健康問題を抱える子供も、それぞれに増加しています。
前述のとおり、運動能力の低下は学力の低下も招いてしまいます。そのようなことにならない為に、大人がまずはしっかりとその原因や改善点を知っていく必要があるのです。
運動も勉強もどちらも得意な子供の特徴
運動神経の悪い子はどうしたらいいのと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は運動神経の悪い子供は存在せず、運動神経は遺伝しないということがわかっています。ではなぜ運動ができる子は勉強もできる傾向があるのでしょうか。まずは運動と勉強どちらも得意な子供たちの特徴から見ていきましょう。
集中力がある。
集中力がある子供はだらだらと長時間物事にとりくむのではなく、短時間に全力で取り組める集中力を持ってる傾向があります。運動も勉強もここぞという時に力を発揮するには集中力は欠かせない能力ですね。
忍耐力がある。
忍耐力がある子供は、苦手なことや辛いことでも頑張れたり、自分の思い通りにいかない事があっても感情に振り回されない傾向があります。
物事を前向きにとらえられる。
前向きに物事を取られられる子供は、行き詰ったり失敗しても物事を前向きにとらえ、切り替えて思考と行動を次に進めることができる前向きさがあります。
諦めずにやると決めたことをやり抜くことができる。
結果が出るまで諦めずに練習や日々の努力ができる子供は最終的には大きな結果を残せるようになっていきます。
運動も勉強も得意な子供にみられる特徴の一部をご紹介しました。
要因はほかにもありますが、これらの特徴を持った子供の多くは、勉強でも結果を出しながら、何かしらの運動を経験しているということもわかってきています。それは運動が集中力だけでなく、注意力や記憶力、決断力など、ほぼすべての認知機能を高める効果があり、また団体スポーツなどでは他者との関わりの中で忍耐力や仲間と励ましあい諦めずにやり抜く力も身に付きやすいからと言われています。
では次に、運動能力の向上やそれによって学力の向上につながると言われている取り組みをいくつかご紹介致します。
運動能力と学力向上への効果的な取り組み。
朝食をしっかり食べる。
運動や勉強が得意な子供は朝食をしっかりとっているということがわかっています。
文部科学省が小学生を対象に行った調査では、朝食を摂取している子供ほど、算数と国語の成績が良いという結果となりました。また、スポーツ庁が小学生と中学生を対象に調べた朝食摂取と体力調査の結果でも、朝食を摂取している子供ほど、体力合計点が高いという結果になっています。
朝食が大切な理由は「脳へのエネルギー補給」です。エネルギーとなるブドウ糖を脳は血液中から取り入れますが、成長著しい子どもの脳は大人の2倍ほどのブドウ糖を必要としているので、朝食を抜いてしまうことはエネルギー不足に繋がり、勉強に集中できないといったことが起こってしまうのです。
集中力を高めるためにも、子供もそして大人も朝はバランスの良い食事を心がけましょう。もちろん食べすぎは逆効果なので注意が必要です。
適度な運動を習慣化する
フィンランドの調査によると、毎日たくさん歩く子どもは、ストレスに対する抵抗力が高くなるという結果が出ています。適度な運動は脳が活性化され集中力と記憶力が上がり、また反復した運動をすることで脳内物質セロトニン(幸せホルモンとも呼ばれている)が心を安定し前向きな思考ができるようになる傾向があると言われています。
なかなか時間が取れない方でも、通学や通勤でバスや自転車を使わずにしっかりと歩くようにしたり、エスカレーターを使わずに階段を使って上るなど日々の生活の中でできる運動を取り入れるようにするだけでも脳が活性化してスッキリとした頭で勉強や仕事に望めますよ。
また、お子さんの運動能力を着実にアップさせたい方には、近年増えている体育スクール等もお勧めです。単純な体力アップだけでなく、体の様々な機能をバランスよく鍛えることで、子供の身体能力を向上させ、段階的に身に付けさせることで自信をつけさせられることができます。
生活リズムを整える。
睡眠時間が安定してしっかりとれていると成長ホルモンがしっかりと体の筋肉を作ることができます。逆に就寝時間や起床時間がまちまちで生活リズムが狂っていると、寝ても寝ても眠かったり、朝起きても疲れが取れておらず日中に集中できないといったことがおこります。規則正しい生活をすると体のオンオフが切り替わりやすくなり、睡眠の質上がることでしっかりと1日の疲れをリセットできるのです。
また勉強や運動をする時間もやったりやらなかったりではなく、毎日の生活の中に無理なく取り入れられるようにある程度スケジュールをたててあげることで、習慣化されて子供の気持ちのゆとりができ、一つ一つの物事に集中力して取り組むことができるのです。
睡眠と食事、そして適度な運動を生活リズムにとりいれることで、成長ホルモンの分泌が正常化され気持ちが落ち着き、感情のコントロールもしやすくなります。
動きの引き出しを増やす。
人は生まれながらにたくさんの神経細胞を持っており、成長とともに神経細胞同士のつながりが発達して、その情報の伝達回路によって体が動かせるようになっていきます。この神経の伝達システム全体のことを「神経系」と呼びますが、神経系の発達はとても速く、5-6歳で80%、12歳までに100%に達するともいわれています。ですから、子供は体を動かす遊びや様々な運動を通して多くの動きを学習しているのです。体を使って経験したことの感覚は、脳に蓄積され、経験の量と比例して「動きの引き出し」が増えていきます。この引き出しの数が多いほど、将来にわたって運動する時に体へ適切に指令をすることができるようになり、思った動きができるようになります。もちろん無理やりやらせるのは子供のストレスになりますが、例えば水泳、ダンスやバレエ、体操など、子供が楽しんでやれるものを習い事として定期的に取り入れることも効果的なのです。
まとめ
如何でしたでしょうか。運動能力が上げることによって、脳の神経系を活発化し、勉強に取り組むときに役立つ集中力などの認知機能を高める効果があることがわかりました。そして、運動能力は遺伝ではなく、幼少期の体の動きの経験が重要となることがわかってきています。
まずは基礎体力を養えるように、生活に適度な運動を子供と一緒に取り入れてみませんか。また生活の中だけでは身に付かないさまざまな動きを学習させるためにも、その子に合った運動をお子さんと話し合って始めてみてはいかがでしょうか。